【第5回 家づくりは家族の絶好のテーマ】
―― 家族の再生はいまの日本で、もしかすると一番大きな問題かもしれないと思っています。教育の問題にも密接に絡んでいますし。そういった意味で、家という器から家族の再生を試みるにあたって、これからどうすればいいのかについてのアドバイスをいただきたいのですけれども。
藤原智美 一ついえるのは、やはり言葉がないということだと思うんです。対話がないということですね。すると、対話はどうしたら復活させられるかということになると思うんです。
よく、父親は子どもに話しかけようよ、するとなんか返ってくるかもしれないからということを、例えば政府広報みたいなので言うわけですよ。でも、それが返ってこないからお父さんはしゃべれないわけです。
―― そうですね(笑)。
藤原 そんなのは無理なのだと思います。では、どうすればいいかということになるわけです。僕はやはりそういう意味で、住まいだと思うんですね。住まいという「具体性」が、そこで初めて意味を持ってくる。
例えばある一家がいて、その人たちが家を買おうと思っている、あるいは改築しようと思っているといった時に、「うちもそろそろかな」と思ってから実際に引っ越すまで2年から
3年かかるわけですよ。カタログを取り寄せたり展示場を回ったりして、実際に建てたり、あるいは買ったりして引っ越すまではね。
僕はその間がものすごく大事な時期だと思うんです。つまり家づくりというのはプロセスなのです。その時に口もきかない娘に、お父さんが「おまえどんな部屋がほしいんだ」と聞くんですね。するとお父さんが帰ってきたら「フンッ」と2階に上がっていた娘が、それに対してはなにか答えると思うんですよ。
どんな部屋がいいのか。あるいはとんでもないことを言うかもしれない。防音付きの部屋がいいとか、グランドピアノを置いてほしいとか。すると「いや、お父さんの給料はこんなもんだよ」ということが言える。そこで初めて、対話が生まれるんですね。
それを例えば週に1回でいいから、3年間家族が全員でずっとやっていくとすると、これは大変な財産ですよ。
―― それは非常に面白い話ですね。
藤原 これをやらないんですね。とてももったいない話だと思います。最初は方眼紙に書いて、こういう部屋はどうだということを週に
1回やる。3年間で何回その家族会議が開かれるか。テーマがないと、なにか話そうよといったってなかなか話せません。だけど、家に関してはやっぱりいろいろな話が出てくると思うんですね。
そして部屋を語る、あるいは住まいを語るというのは、結局暮らしを語ることになるんです。それをもっというと、人生観を語るということになるのですね。
―― ああ、なるほど。その通りですね。
藤原 「おまえは、なんでそういう部屋がほしいのか」「こういうことがしたいから」「何でしたいのか」という話になるわけです。子どもが自分の将来の希望を話し始めるかもしれない。
だから、これほど絶好なテーマはないんだけれども、それを利用していないというのは非常におしいですよね。
―― そうですね。特に家を建てる頃というのは、子どもも反抗期前後のケースが多いですよね。
藤原 そうです。
―― そのあたりで絶好のテーマをみすみす逃して、むしろ家族が崩壊するということになってしまっているとすれば、もったいない限りです。
藤原 だから、家族の再生ということで言えば、それは家づくりのプロセスにあるということだと思います。もう、それしかないですね。それをすっ飛ばして、いきなり新しい家に入ったから、さあ次の日から幸せな家族が生まれるかというと、そんなことはありえないわけです。
家づくりというプロセスを通して、家族という人間関係を再構築していく。こういう作業をやらないともったいない。そういう感じがしますね。