議員歴が35年の某自民党首脳は参院選の翌日、
「こんな選挙ははじめてだ。運動員が電話を掛けてもかつてなく反応がいいし、ビラを渡しても嫌な顔をされない。選挙環境が一変した、驚きです。小泉効果ということなのだろうが、なぜこれほどの変化が起きたのか、不思議な気分だ」
と戸惑いの感想を洩らした。
また、小泉純一郎首相の地元、神奈川県で、知名度も実績もまったくない自民党の新人候補が129万票の大量得票を得たことにも驚嘆の声があちこちで出た。同県の場合、3年前の前回参院選では、ベテランと新人の二人の自民党候補が立ったが、合わせて75万票しか取れず、共倒れになっている。この差はただごとでない。
選挙結果にみる党勢の伸縮は、まず議席の増減ではかろうとするが、むしろ比例区得票(今回は政党名、個人名のいずれでもよかった)のほうがはっきりする。3年前の前回と比較して増減をみると、自民699万増、民主321万減、公明44万増、共産387万減、社民75万減、自由98万減、となった。
勝ち組は自民、公明の与党2党。民主、共産、社民、自由の野党4党は枕を並べて負け組である。勝ち組の筆頭、自民は13.0%も得票率を押し上げ、負け組筆頭の共産は6.7%も落とし、明暗をはっきり分けた。小泉効果の威力は絶大で、小泉が掲げる「聖域なき構造改革」断行に国民の期待度がいかに強いか、を示している。一方、小泉改革をもっとも激しく批判した共産党が大量に票を減らした。
だが、これほどの小泉ブームによって政治が活況を呈しているのなら、投票率はぐんと伸びるはずであり、自民党選対本部も、
「65%ぐらいだろう」
と見通していたが、実際は56.44%で、前回を2.40ポイントも下回った。戦後3番目の低さである。
なぜなのか。自民党首脳の一人は、
「よくわからない。株価のせいかなあ。小泉改革の危うさのようなものを感じとっていて、だからといって野党はさらに頼りなく、投票に二の足を踏んだのかもしれない」
と首をかしげた。自民大勝のにぎわいのなかで、有権者の一種の戸惑いが、投票率を下げている、というもう一つの現実を軽視すると、小泉政権は手痛い打撃を受けることになりかねない。
政権は「ブームの3カ月」と参院選勝利でひと区切りつけ、第2幕に入った。これからが本番で、小泉首相は1幕目以上の厳しい試練に直面する。景気と外交の両面でこの政権のぜい弱さが目立ちだしており、内閣支持率もかげりがみえてきた。
小泉首相は、「戸惑いのなかの人気」であることを自覚し、国民意識の変化を的確につかみながら、スピード感のある改革作業を進めなければならない。きわどい道のりである。