【Part4 経済危機の核心は「モラルの危機」】
要するに、問題設定がおかしいのだ。
不良債権問題の核心は、マーケットが問題視しているいくつかの大手企業に対する引当が十分でないという単純な事実に尽きている。中小企業の問題などではない。
それなのに、政策関係者はその事実を直視しようとしない。
専門用語や技巧を駆使して、問題の周辺部分だけを漂白したところで、問題の核心はドス黒くなっていくだけだ。もっとも、マーケットは馬鹿でも無知でもない。モラルを喪失した日本経済に、早晩厳しい天罰を下すだろう。
不良債権問題の裏側にある不良経営者問題を長年放置してきたわが国は、資本主義を支える重要な三つのルールを失ってしまった。そのルールとは、
(1)財務状況を正しく開示すること
(2)借りたカネはキチンと返すこと
(3)経営に失敗したら退場すること
の三つを指す。
銀行は不良債権に対して、十分な引当金を積まずに、含み損を抱えている。その不良先は、正しい財務諸表を開示していない。
それに飽き足らず、借金を踏み倒して平気の平左になってきた。その結果、本来であれば、退場しているはずの企業がいつまでも居残り、退場しているはずの銀行がマーケットに居座っている。
これは、一体全体なんなのだろう。
「ルールを守る社会」という資本主義の前提を崩してしまった咎は大きい。ルールを破る反則者が得をして、正直者が馬鹿を見る――こんな不公平な社会が健全な経済成長を実現できるわけがない。
GDPのコンマ数%を語る前に解決すべき大問題は、このモラルの荒廃である。資本主義のルールを守らない国に、資本主義の健全な発展はない。
エセ医者たちはそんな基本的なことさえ分からないのだ。
資本主義からルールが失われたとき、資本主義は暴力主義と化す。ルールを巧みに破る悪賢い企業だけが生き残る。ルール無用の乱闘と混乱がわれわれを待っていることだろう。
日本の危機は経済危機ではない。モラルの危機である。そして、これは、日本経済最大の危機でもある。
もはや、この危機を打開できるのは、小泉首相のみだ。真の改革者としての彼の力量を信じたいと思う。