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Part1
司法の役割とは

Part2
2割司法になる理由

Part3
なぜ裁判員制度が重要か

Part4
国民の自覚をもとにした改革を

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中坊公平 弁護士・元日弁連会長  (page4/4)
2001.11.28

【Part4 国民の自覚をもとにした改革を】
 分かりやすい例を挙げると、アメリカの陪審員の決め方は次のようになっている。たとえば全国民のなかから30人くらいがまず無作為抽出で選ばれる。そこから12名ぐらいの陪審員が決まるが、その決まる過程のいちばん最初に、裁判官は30人を集めて「抽選で決まりました。したがってこれから陪審員として、こういう仕事をしていただかなければいけません」と説明する。

 といっても、陪審員というのは日常生活や仕事から遮断され、拘束されることになる。するとみんなは「自分はこういう事情があって」と、なるべくなら出たくないという人も少なくない。そこで裁判官は「都合の悪い人は手を挙げてください」と挙手させる。するとアメリカでも何人かの人が手を挙げる。そこで裁判官は、手を挙げた人を一人ひとり自分の部屋へ呼ぶ。たとえば「いま子供が病気だ」「自分はこういう会社で、このような仕事で」といろいろな事情を一人ひとりが訴える。

 そのとき裁判官は「いやそれよりも、国家の義務のほうが優先します。だから会社にはそのことを了解を得てください」と教育し、命ずるのである。テレビで見ていると、だいたい3分の2以上が却下されているという様子であった。それが国民主権、自分が国の政治、司法を支えているという意識を持たせるための民主教育の姿である。そこを、ものすごく手間暇かけてやっているのである。

 裁判員制度がいろいろ問題を指摘されながらも、アメリカもイギリスにしても、どうしてあそこまで頑固に続けていくかといえば、まさに国家の基本に触れることだからなのだ。主権者として行動するためには何が必要かということを、教育する機関にもなっているのであり、そこが日本は欠落している。

 日本に話を戻すと、裁判員制度を刑事裁判の重罪事件について導入しようと提言したのだが、それが実現すると、こんどは訴訟手続き全部が変わってくる。裁判員は身柄を拘束されるから、したがって刑事裁判は連日開廷とせざるをえない。そうなれば、いまのように何年にもわたって裁判が続くということがなくなる。実際アメリカではどんなに大きな重罪事件であっても、10日とか20日というあいだに結論が出ているのである。日本でも一気に裁判が迅速化することになろう。

 さらには、10数人が調書を読むなどというわけにはいかないから、どうしても法廷での直接審理になる。したがって取り調べの仕方も変わってくる。そうすると、弁護士の数がこんなに少なくていいのかということにもなり、法曹人口全体が少なすぎるということにもなってくる。だからおのずと、数も増やさなければいけない。すべて密接に関連した問題だからである。

 以上は分かりやすい一例で、他にも関連してくる部分が多々あるが、要するにこのように、司法の全般が全面的に変わってくるのである。「国民的基盤の確立」という言葉が意味することは、単なる制度の部分変更にとどまらず、それを入り口としてすべて変わらざるを得なくなるというトータルな意味をもっている。このように有機的な、統合的なかたちとして、今回の『司法制度改革審議会意見書』を読んでいただかないと、これを部分的に取りあげたのでは、非常に間違いが多くなってしまうのではないか。私はそう思っている。

 上からの改革ではなく、下からの、特に国民の自覚をもとにした改革こそが、これからの司法改革において重要である。また、国民が自覚することによってこそ、全体が本当に、静脈から上がってまたそこから動脈に戻ってというように、本来の循環――司法の役割――が実現していくのである。

(全文終了)

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